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離婚と子どもの問題:2026年法改正で何が変わったのか?
離婚は、夫婦にとって人生の大きな岐路ですが、お子様がいらっしゃる場合には、その将来に深く関わる重要な決断をしなければなりません。特に「親権」をどうするか、「養育費」はいくらが適切か、という問題は、多くの親御様が頭を悩ませる点です。大切なお子様が、離婚後も変わらぬ愛情を受け、健やかに成長できる環境を整えることは、親としての最も重要な責任といえるでしょう。
これまで日本の法律では、離婚後の親権は父母のどちらか一方が持つ「単独親権」が原則でした。しかし、2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚時に父母の協議や調停で、父母双方を親権者とする「共同親権」または父母の一方を親権者とする「単独親権」を定めることができるようになりました。この法改正は、離婚後の親子関係のあり方を根本から見直すものであり、これまでの常識が大きく変わることになります。
「共同親権と単独親権、どちらが自分の子どもにとって良いのだろう?」「新しい法律で、養育費の取り決めはどう変わるの?」といった疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、虎ノ門法律経済事務所柏支店の弁護士が、最新の法改正を踏まえ、親権と養育費を考える上で最も大切な「子どもの利益」を軸に、具体的な決め方や注意すべき点を専門家の視点から解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、感情的な対立に流されることなく、お子様の未来のために最善の選択をするための知識と視点を得られるはずです。
より具体的な制度内容については、共同親権と単独親権の違いに関する記事もご参照ください。
(参考:法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育 …」)
最優先すべき「子どもの利益」を守るための5つの判断軸
親権や養育費の話し合いを進める中で、どうしてもお互いの感情がぶつかり、議論が平行線をたどることがあります。そんな時、必ず立ち返るべき原点が「子どもの利益」です。これは、裁判所が判断を下す際にも最も重視する基準であり、すべての親御様に共有していただきたい考え方です。
しかし、「子どもの利益」という言葉は抽象的で、具体的に何を指すのか分かりにくいかもしれません。そこで、私たちは法律相談の際に、以下の「5つの判断軸」に沿ってご自身の状況を整理していただくようお勧めしています。

- 生活環境の継続性:お子様の生活リズムや交友関係をできるだけ変えないこと。
- 心身の健全な発達:お子様が精神的に安定し、安心して過ごせる環境を確保すること。
- 両親との良好な関係:離婚後も、親との良好な関係を築くこと。
- 子どもの意思の尊重:お子様の年齢や発達段階に応じて、その気持ちや意見に耳を傾けること。
- 経済的な安定:これまでと同水準の生活を維持できるよう、経済的な基盤を確保すること。
これらの軸は、親権者をどちらにするか、養育費をどうするか、面会交流をどう行うかといった具体的な問題を検討する際の判断基準となります。
親権の決め方:共同親権と単独親権、どちらを選ぶべきか
法改正により、親権の選択肢は「単独親権」と「共同親権」の2つになりました。それぞれの特徴を正しく理解し、「5つの判断軸」に照らし合わせながら、ご自身の家庭にどちらが適しているかを冷静に検討する必要があります。
単独親権とは、これまで通り、父母のどちらか一方が親権者となる制度です。親権者となった親が、子どもの監護・教育や財産管理に関する最終的な決定権を持ちます。
一方、共同親権は、離婚後も父母双方が親権者として、子どもの養育に関わる重要な事項について協議して決定する制度です。ただし、身上監護に関する日常の行為については、一方の親が単独で決定できます。習い事なども、内容や費用負担、子どもへの影響によっては、父母で協議すべき事項となる場合があります。
どちらを選ぶべきかは、一概には言えません。例えば、離婚後も父母が互いに尊重し、子どものために協力し合える良好な関係を築けるのであれば、共同親権はお子様が両親双方との関わりを維持できるという大きなメリットがあります。しかし、相手への不信感が強い、あるいはDVやモラハラがあるといったケースで安易に共同親権を選択すると、離婚後も絶えず対立が続き、かえってお子様を混乱させ、精神的な負担をかけてしまう危険性があります。
重要なのは、制度の名称に惑わされず、お子様の視点に立って現実的な判断を下すことです。そのために、以下の2つの基準を具体的に考えてみましょう。
判断基準①:これまでの監護実績と子どもとの関係性
裁判所が親権者を判断する際に最も重視するのが、「監護の継続性」という考え方です。これは、これまで主にお子様の世話をしてきた親が、離婚後も引き続き監護を続けることが、お子様の環境変化による負担を最小限にし、精神的な安定につながるというものです。
具体的には、食事の準備、保育園や学校への送迎、学校行事への参加、病気の際の看病など、日常的な世話をどちらが中心となって行ってきたかという「監護実績」が評価されます。これは「母親が有利」という単純な話ではなく、あくまでお子様との関わりの密度と質が問われるのです。これまで築き上げてきたお子様との信頼関係は、親権を考える上で非常に重要な要素となります。なお、親権と似た権利として監護権というものもありますが、これらは密接に関係します。
判断基準②:離婚後の養育環境と協力体制
離婚後、お子様がどのような環境で生活することになるのかを具体的に見通すことも重要です。転校や転居が必要になるのか、祖父母など親族からのサポートは得られるのか、といった物理的な環境を整えられるかは重要なポイントです。
さらに、共同親権を選択する場合には、「父母間の協力体制」を具体的に構築できるかが重要な検討事項となります。感情的なわだかまりを乗り越え、子どもの進学や医療といった重要事項について、冷静に話し合うことができるでしょうか。以下のような点を事前に取り決めておかなければ、後々トラブルになる可能性が高まります。
- 定期的な連絡手段(電話、メール、連絡帳アプリなど)
- 意見が対立した場合の解決ルール
- 緊急時(病気や事故など)の連絡・判断方法
もし、相手と顔を合わせるのも難しい、話し合いが常に喧嘩になるといった状況であれば、無理に共同親権を選ぶことは、お子様にとって最善の選択とは言えないかもしれません。
養育費の決め方:相場と将来を見据えた取り決めのポイント
養育費は、親権者にならなかった親が、子どもの生活を支えるために支払うお金です。これは親の義務であり、お子様が経済的に安定して成長するための大切な費用です。その養育費の金額は、当事者間の話し合いで決めるのが基本ですが、その際に参考になるのが、裁判所が公表している「養育費算定表」です。
この算定表は、支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収、そしてお子様の人数と年齢に応じて、養育費の目安となる金額が分かるようになっています。まずはこの算定表を用いて、ご自身のケースにおける相場を把握することが第一歩となります。

養育費は夫婦双方の年収や子どもの人数、年齢などを考慮して決定されます。裁判所では「養育費算定表」と呼ばれる目安の表が公開されており、多くのケースで参考にされています。養育費の目安のシミュレーション(参考例):
支払う側の年収(給与額)400万円、受け取る側の年収(給与額)200万円、子ども(14歳以下)が1人の場合の相場(月額)は約2~4万円。
支払う側の年収(給与額)600万円、受け取る側の年収(給与額)200万円、子ども(14歳以下)が1人の場合の相場(月額)は約4~6万円。
支払う側の年収(給与額)800万円、受け取る側の年収(給与額)200万円、子ども(14歳以下)が1人の場合の相場(月額)は約8~10万円。
ただし、算定表はあくまで標準的な生活費を想定した目安です。例えば、お子様が私立学校に通っている場合の学費、持病のための特別な医療費、高額な習い事の費用などは、算定表の金額に加えて別途協議し、上乗せして請求することが可能です。将来の不払いを防ぐためにも、支払い方法(毎月の振込日など)や支払い期間を明確に定めておくことが極めて重要です。
(参考:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告書」)
いつまで支払う?成人年齢引き下げと大学進学の影響
養育費をいつまで支払うかという「終期」も、離婚時に必ず決めておくべき重要な項目です。民法改正により成人年齢は18歳に引き下げられましたが、養育費の終期が自動的に18歳になるわけではありません。
現在の実務では、高校卒業後に大学や専門学校へ進学することが一般的であるため、多くのケースで「20歳まで」あるいは「大学卒業まで(22歳に達した後の最初の3月まで)」と取り決めることが可能です。親の学歴や収入、お子様自身の進学への希望などを考慮し、将来のトラブルを避けるために、具体的な終期を合意書に明記することが不可欠です。
法定養育費とは?取り決めがない場合の新たな選択肢
離婚時に養育費の取り決めができなかった、あるいは相手が話し合いに応じてくれない、といったケースは残念ながら少なくありません。そのような状況を救済するため、2026年の民法改正で「法定養育費」という制度が新設されました。
これは、父母が子の養育費の額を定めずに離婚した場合に、離婚時から引き続き子を監護する父母の一方が他方に対し、月額2万円に子の数を乗じた額を法定養育費として請求できる制度です。これにより、当面の生活費を確保できるというメリットがあります。
ただし、これはあくまで養育費の取決めをするまでの暫定的・補充的な制度です。法定養育費の金額は、本来算定表に基づいて得られるはずの適正な金額よりも低くなる可能性があります。したがって、この制度だけに頼るのではなく、最終的には弁護士を通じて、算定表を基準とした適正な養育費を請求することが、お子様の利益を守るためには重要です。
注意すべき例外:DV・子の連れ去りがある場合の対応
ここまで、父母間の協力関係を前提とした話し合いについて解説してきましたが、中にはそのような状況が全く期待できないケースもあります。相手からのDV(身体的・精神的暴力)やモラハラに苦しんでいる場合、あるいは一方的に子どもを連れ去られる危険がある場合です。
このような状況では、何よりもまずお子様とご自身の安全を確保することが最優先です。ためらうことなく、直ちに専門機関や弁護士に助けを求めてください。
法律上も、DVや虐待がある場合には、裁判所は共同親権を認めるべきではないとされています。このようなケースで無理に共同親権を選択すれば、離婚後も支配関係が続き、お子様がさらなる危険に晒されることになりかねません。シェルターへの一時避難、裁判所への保護命令の申し立て、面会交流の制限や禁止など、お子様を守るための法的な手段はいくつも存在します。
「子どものために、父親(母親)と会わせなければ」とご自身を責める必要は全くありません。お子様の心身の安全を脅かす相手との関係を断ち切ることは、子どもの利益を守るための、親としての正しい判断です。深刻な悩みを抱えている場合は、決して一人で判断せず、速やかにご相談ください。状況によっては、単独親権を選択することが最善の道となります。
合意内容を法的に守る「公正証書」の作成を
時間をかけて話し合い、親権や養育費について合意に至っても、それが単なる口約束や当事者間で作成した合意書だけでは、法的な実効性に不安が残ります。特に養育費は、離婚後に支払いが滞るケースが後を絶ちません。
そこでお勧めするのが、合意内容を「公正証書」として作成しておくことです。公正証書は、公証役場で公証人が作成する公的な文書であり、高い証明力を持っています。
さらに重要なのは、養育費の支払いについて「強制執行認諾文言」を付けておくことです。この一文がある公正証書を作成しておけば、万が一支払いが滞った際に、裁判を起こすことなく、直ちに相手の給与や預貯金などを差し押さえる「強制執行」の手続きが可能になります。
作成には手間と費用がかかりますが、将来にわたるお子様の生活を守るための有効な手段となります。口約束のリスクを考えると、公正証書を作成しておく意義は大きいといえます。離婚協議書を公正証書にすることで、将来の不安を大きく軽減できるのです。
まとめ:お子様のために、一人で悩まず弁護士にご相談ください
離婚時のお子様の親権や養育費に関してご不安やお悩みがある場合、一人で抱え込まずにまずは信頼できる弁護士へご相談ください。
当事務所では離婚問題に関する知識を持つ弁護士が丁寧に対応し、あなたとお子様の状況に応じた解決方法を共に検討します。初回相談は1時間無料で行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
親権や養育費の問題は、法的な知識だけでなく、離婚後の生活を見据えた冷静な判断力が不可欠です。しかし、感情的な対立がある場合、当事者だけですべてを円満に解決することは容易ではありません。
弁護士は、あなたの代理人として交渉を進めるだけでなく、法的な観点から「子どもの利益」を踏まえた対応方針を整理することができます。お子様の生活や将来に関わる問題について不安がある場合は、早めに弁護士へご相談ください。
