共同親権とは?単独親権との違い、DV等の注意点を弁護士が解説

2026年4月施行「共同親権」制度とは?法改正の全体像

2024年5月17日、離婚後の親権制度を大きく見直す改正民法が成立し、2026年4月1日から施行されることが決まりました。この法改正の最大の注目点が「共同親権」制度の導入です。

これまで、日本では離婚後の親権は父母のどちらか一方のみが持つ「単独親権」が原則でした。しかし、今回の改正により、離婚時に父母が協議して合意すれば「共同親権」を選択できるようになります。もし協議で決まらない場合は、家庭裁判所が個別の事情を考慮し、共同親権か単独親権かを判断することになります。

このニュースに触れ、「相手と関わり続けなければならないのか」「DVやモラハラがあった場合でも共同親権を強制されるのではないか」といった強いご不安を抱かれている方もいらっしゃるかもしれません。

まず最も重要な点をお伝えします。今回の法改正では、父母の一方からDVや虐待などがあり、共同で親権を行うことが困難であると認められる場合には、家庭裁判所は「単独親権」を定めなければならないと法律で明確に規定されました。

この記事では、2026年4月から始まる新しい親権制度について、何がどのように変わるのか、単独親権との具体的な違い、そしてDVやモラハラがある場合にどのようにご自身の権利とお子様の安全を守るべきか、法律の専門家である弁護士が詳しく解説します。離婚時のお子様に関する問題の全体像については、「離婚時に子どもの親権や養育費で悩んだときに考えるべきこと」で体系的に解説していますので、そちらもご参照ください。

法改正の背景:なぜ今、親権制度が見直されたのか

今回の親権制度の見直しには、社会の変化やこれまでの制度が抱えていた課題が背景にあります。主な理由として、以下の点が挙げられます。

  • 「子の利益」の考え方の変化:離婚によって親子関係が途切れるのではなく、離婚後も父母双方が子の養育に責任を持ち、関わり続けることが、子どもの健全な成長にとって望ましいという考え方が社会的に広まってきたこと。
  • 養育費や面会交流の問題:従来の単独親権制度のもとで、養育費の不払いや面会交流の断絶といった問題が深刻化していました。父母双方の責任を明確にすることで、これらの問題の解決を図る狙いがあります。
  • 国際的な潮流:諸外国では共同親権が主流であり、国際結婚が破綻した際のハーグ条約との整合性なども考慮されました。

このように、今回の法改正は、あくまで「子どもの健やかな成長」という目的を達成するために、親の責任のあり方を見直すものと位置づけられています。

いつから適用?既に離婚している場合はどうなる?

新制度は、2026年4月1日から施行されます。この日以降に離婚が成立するケースでは、新制度に基づいて親権者を定めることになります。また、施行日前に離婚が成立している場合でも、施行日以降に家庭裁判所へ親権者変更の申立てが行われる可能性があります。

では、既に離婚が成立し、単独親権となっている場合はどうでしょうか。

法改正によって、自動的に共同親権に切り替わることは一切ありません。しかし、施行日以降であれば、元配偶者から家庭裁判所に対して「親権者を共同親権に変更してほしい」という申立てがなされる可能性はあります。

ただし、その場合でも、裁判所は「子の利益」を唯一の基準として慎重に判断します。DVや虐待の経緯がある、あるいは父母間の対立が激しく協力が期待できないといった事情があれば、変更が認められる可能性は低いと考えられます。いずれにせよ、離婚の進め方は個々の状況によって大きく異なるため、専門家への相談が重要です。

共同親権と単独親権の具体的な違いを民法から読み解く

共同親権と単独親権の最も大きな違いは、「子どもの重要事項に関する意思決定を誰が行うか」という点にあります。親権は、子どもの世話や教育を行う「身上監護権」と、子どもの財産を管理する「財産管理権」から構成されますが、これらの権利をどのように行使するかが変わってきます。

共同親権と単独親権の主な違いを比較した図解。親権者が誰になるか、子どもの重要事項に関する意思決定を誰が行うかの違いを分かりやすく示している。
  • 単独親権:親権者となった親が、単独で全ての意思決定を行います。
  • 共同親権:父母が共同で意思決定を行いますが、全ての事柄について協議が必要なわけではありません。法律では「日常の行為」と「重要事項」に分けてルールが定められています。

この度の民法改正は、離婚後の子の養育に関する様々なルール変更を含んでおり、非常に複雑です。詳細な条文や公式見解については、以下の法務省のウェブサイトもご参照ください。

参照:離婚後の子の養育に関する民法改正の概要

決定権の違い:「重要事項」と「日常の行為」の線引き

共同親権下での意思決定のルールは、子どもの生活への影響度合いによって二つに分けられています。この線引きを理解することが、共同親権を理解する上で極めて重要です。

日常の行為(監護者が単独で決定可能)

日々の生活に関する事柄は、主に子どもの面倒を見ている親(監護者)が一人で決定できます。具体的には、以下のようなものが想定されます。

  • 食事、入浴、就寝などの日常生活の世話
  • 習い事の選択や変更(月謝が高額でなく、子どもの将来に大きな影響を及ぼさない範囲)
  • 学校からの日々の連絡への対応
  • 短期の旅行
  • 風邪などの日常的な病気の際の受診

重要事項(父母の共同決定が必要)

子どもの人生に大きな影響を与える可能性のある事柄については、父母双方の同意が必要です。どちらか一方が勝手に決めることはできません。

  • 進学(学校の選択)、転校、留学
  • 子どもの居住地の変更を伴う引越し
  • 長期の入院や手術を伴う医療行為
  • 子の財産に関する重要な決定(例:相続した不動産の売却)

ただし、例外として「急迫の事情」がある場合は、重要事項であっても単独で決定できます。例えば、子どもが交通事故に遭い緊急手術が必要な場合や、DVから避難するために緊急で転居する場合などがこれにあたります。

どのような行為がどちらに分類されるかについては、法務省がQ&A形式の資料を公開していますので、こちらも参考にしてください。

参照:共同親権に関する法務省のQ&A

協議で決まらない場合:家庭裁判所の役割

共同親権を選択したものの、重要事項について父母の意見が対立し、どうしても合意できない場合はどうなるのでしょうか。このような場合、父母のどちらか一方が家庭裁判所に申し立てを行うことができます。

申立てを受けた家庭裁判所は、双方の主張を聞き、「子の利益」の観点からどちらの意見を優先すべきかを判断し、親権の行使方法を決定します。

例えば、進学先について意見が対立した場合、裁判所は子どもの学力、希望、各学校の環境、学費の負担能力などを総合的に考慮して、子どもにとってより良い選択はどちらかを判断します。このように、対立が生じた際のセーフティネットとして家庭裁判所が機能する仕組みが設けられています。離婚時に取り決めた内容は、後々のトラブルを防ぐためにも、離婚協議書や公正証書として書面で残しておくことが非常に重要です。

【重要】DV・モラハラがある場合の親権はどうなるか

この法改正に関して、最も多く寄せられるご相談が、DV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ(モラル・ハラスメント)の被害に遭われている方の「加害者と共同親権になってしまうのではないか」という切実な不安です。

DVや虐待などの事情がある場合には、単独親権が定められるべき事情として慎重に考慮されます。

今回の改正民法では、「父又は母が子に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」「その他父母が共同して親権を行うことが困難であると認められる事情があるとき」には、家庭裁判所は必ず単独親権を定めなければならないと、明確に定められました(改正民法第819条7項)。

これは、法律が被害者と子どもの安全確保を最優先に考えていることの証左です。DVやモラハラは、まさに「子に害悪を及ぼすおそれ」や「共同で親権を行うことが困難な事情」の典型例です。したがって、そのような事実を適切に主張・立証できる場合には、単独親権が定められる方向で判断される可能性があります。

裁判所が単独親権と判断する具体的な基準

家庭裁判所が単独親権を定めるべき「DV等」には、どのような行為が含まれるのでしょうか。これには、身体的な暴力に限らず、精神的、経済的なDVも含まれます。

  • 身体的DV:殴る、蹴る、物を投げつけるなどの直接的な暴力。
  • 精神的DV(モラハラ):人格を否定するような暴言を繰り返す、無視する、行動を過度に監視・制限する、脅迫するなどの行為。
  • 経済的DV:生活費を渡さない、借金を負わせる、働くことを妨害するなどの行為。
  • 面前DV:子どもの目の前で配偶者に暴力を振るったり、暴言を吐いたりする行為。これは子どもへの心理的虐待とみなされます。

これらの行為は、いずれも被害者の心身を傷つけ、健全な親子関係や夫婦間の協力を不可能にするものです。裁判所は、これらの事情を総合的に考慮し、子の安全と福祉の観点から単独親権が適切かどうかを判断します。

単独親権を主張するために必要な準備と証拠

DVやモラハラを理由に単独親権を主張するためには、その事実を客観的に示す証拠が極めて重要になります。特に、目に見える傷が残りにくいモラハラの場合、意識的に証拠を集める準備が必要です。

有効な証拠としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 診断書やカルテ:暴力による怪我や、精神的苦痛によるうつ病などの診断書。
  • 写真や動画:怪我の部位、壊された物、散乱した部屋の様子などを撮影したもの。
  • 音声データ:暴言や脅迫的な発言を録音したもの。
  • メールやSNSの履歴:威圧的なメッセージや、行動を束縛するような内容のやり取り。
  • 詳細な日記やメモ:いつ、どこで、何をされたか、どのような言葉を言われたかを具体的に記録したもの。ご自身の感情も書き留めておくと、精神的苦痛の証明に繋がります。
  • 公的機関への相談記録:警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などへの相談履歴。

「決定的な証拠がない」と諦める必要はありません。一つ一つは小さくても、これらの証拠を積み重ねることで、DVやモラハラの事実を証明することは十分に可能です。証拠収集や法的手続きは、ご自身だけで進めるには精神的な負担が大きすぎます。できるだけ早い段階で、私たち弁護士にご相談ください。より具体的なDVやモラハラが酷い場合の離婚方法と安全確保のポイントについてもアドバイスが可能です。

DVやモラハラの証拠について弁護士に相談する女性。日記などの記録が重要であることを示唆している。

共同親権が関連制度(養育費・親子交流など)に与える影響

共同親権制度の導入は、養育費や親子交流(面会交流)といった、離婚に関する他の重要な取り決めにも影響を及ぼします。今回の民法改正では、これらの制度についても子の利益を守るための見直しが行われています。また、財産分与など、経済的な問題も親権と並行して適切に解決する必要があります。

養育費の取り決めと支払い確保の強化

まず大前提として、養育費の支払い義務は、親権の有無にかかわらず、全ての親に課せられます。共同親権であろうと単独親権であろうと、子どもを扶養する義務に変わりはありません。

今回の法改正では、養育費の不払い問題を解消するため、支払い確保を強化する新たな仕組みが導入されました。

  1. 法定養育費制度の創設:離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合でも、法務省令で定める方法により算定される一定額の法定養育費を請求できるようになります。これにより「取り決めがないから払わない」という言い逃れを防ぎます。
  2. 先取特権の付与:養育費の支払いが滞った場合に備え、子の監護費用のうち法務省令で定める方法により算定される一定額について、先取特権が認められることになりました。これにより、一定の範囲で、他の債権者に優先して養育費を確保しやすくなります。

これらの改正により、子どもの生活を守るための経済的基盤がより強固に保護されることになります。

安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し

子どもが離れて暮らす親と定期的に会って交流する「親子交流(面会交流)」は、子の健全な成長に資すると考えられています。

しかし、これも養育費と同様、DVや虐待があった場合には、子の安全確保が最優先されます。共同親権になったからといって、危険な相手との交流が強制されるわけでは決してありません。

今回の改正では、安全な交流を実現するための見直しも行われました。

  • 家庭裁判所が、第三者機関の立ち会いなどを利用しながら、安全性を確認しつつ交流を試みる「試行的実施」を促すことができるようになります。
  • これまで明確なルールのなかった、離婚前の別居中の親子交流についても、ルールが整備されました。

親子交流は、あくまで子どものためのものです。親の都合や権利主張の道具にしてはならず、実施にあたっては子どもの意思や安全が最大限に尊重されなければなりません。当事者間での話し合いが難しい場合は、家庭裁判所の調停などを利用し、第三者を交えて慎重に進めるべきです。離婚後の養育費や面会交流で発生するトラブルを未然に防ぐためにも、専門家のアドバイスが有効です。

共同親権に関するよくある質問(Q&A)

ここでは、新しい共同親権制度に関して、皆様からよく寄せられるご質問にお答えします。その他、離婚全般に関するよくある質問と回答もご用意しておりますので、ご参照ください。

Q1. 共同親権になったら、子どもは両方の家を行き来しなければならないのですか?

A1. いいえ、必ずしもそうではありません。共同親権は「意思決定を共同で行う」制度であり、子どもの居住場所(どちらの親と主に生活するか)は別途定める必要があります。これを「監護者指定」といいます。多くのケースでは、これまで通りどちらか一方の親を監護者と定め、子どもはそこで安定した生活を送ることになります。

Q2. 相手が無断で子どもを転校させてしまいました。どうすればよいですか?

A2. 転校は「重要事項」にあたると考えられるため、共同親権下では一方の親が単独で決めることはできません。無断で手続きを進められた場合、家庭裁判所に親権行使に関する処分の申立てを行い、手続きの差し止めや元の学校に戻すよう求めることが考えられます。

Q3. 離婚後に私が再婚した場合、共同親権はどうなりますか?

A3. あなたが再婚し、再婚相手とお子様が養子縁組をした場合、第一次的な親権者はあなたと再婚相手(養親)になります。その場合、元配偶者との共同親権は終了するのが一般的です。ただし、個別の事情により判断が異なる場合もあるため、専門家への相談をおすすめします。

まとめ|共同親権でお悩みの方は弁護士にご相談ください

2026年4月から施行される新しい共同親権制度について解説しました。最後に、重要なポイントを改めて確認しましょう。

  • 離婚後の親権は、協議により「共同親権」か「単独親権」かを選択できる。協議で決まらない場合は家庭裁判所が判断する。
  • DVや虐待、モラハラなどがあり、共同で親権を行うことが困難な場合は、法律に基づき家庭裁判所が必ず「単独親権」を定める。
  • 共同親権では、進学や転居などの「重要事項」は父母の共同で、日常のことは主に子どもと暮らす親が単独で決定する。
  • 養育費の支払い確保策が強化されるなど、子の利益を守るための関連制度も改正された。

親権の問題は、お子様の将来を左右する非常にデリケートで重要な問題です。そして、どのような結論が「子の利益」に繋がるかは、ご家庭の事情によって全く異なります。法改正を前に、不安や疑問を抱えたまま一人で悩むのは、精神的にも大きなご負担となるでしょう。

虎ノ門法律経済事務所柏支店では、離婚・男女問題に注力し、これまで数多くのご相談をお受けしてまいりました。あなたの状況を丁寧にお伺いし、法的な見通しと、これから取るべき最善の策を具体的にアドバイスいたします。親権の問題はもちろん、財産分与や慰謝料、弁護士費用についても分かりやすくご説明いたしますので、ご安心ください。

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